牽引療法の効果
整形外科や整骨院で行われる腰痛治療に(脊椎)牽引療法という治療法がありますが、はたして牽引療法は腰痛治療に効果があるのでしょうか?
まずは牽引療法について解説していきます。
牽引療法は椎間関節周囲の軟部組織の伸張、椎間板・椎間関節の軽度の変位の矯正、椎間関節の離開、椎間孔の拡大化などに効果があるとされ、椎間板ヘルニアや脊椎に起因する症状の軽減を目的としています。その歴史は古く古代ギリシャの時代から牽引療法が行われていたという記録が残っています。
牽引する力は体重の1/3〜5を目安とし10分〜15分間程度行います。やりすぎると吐き気、頭痛などを引き起こす場合があります。
一般的には「体を引っ張り狭くなった背骨の間を広げることで椎間板にかかる圧を減少させ、神経の圧迫を取り除き痛みを緩和させる」といった認識ではないでしょうか。
その牽引療法ですが、今その有効性が疑問視されています。
背骨の間を広げることで症状を緩和させる牽引療法ですが、そもそもどうして背骨の間が狭くなるのかというと、日頃の腰への負担が影響して筋肉が緊張し収縮することで起こります。
牽引して背骨の間を広げるためには、その収縮した筋肉を緩めてあげないといけないのですが、筋肉は必要以上に引っ張られると、その力に対して抗おうとします。
これは体の防御反応でこれ以上筋肉が切れたりしないように体が反応しているわけです。 筋肉の収縮が強いほどその反応は強くなるため、体を牽引することでますます腰痛を悪化させてしまうことがあります。
未だに牽引療法の有効性を示した確たる論文や研究結果が存在していないことも頷けます。
欧米ではヘルニアに対しての牽引治療の危険性を腰痛ガイドラインで勧告しており、日本でも福島県立医科大学の菊地臣一教授が著書「続・腰痛をめぐる常識のウソ」の中でこんなことを述べています。
「腰痛の治療に関与している専門家で骨盤牽引が治療手段として真に有効であると思っている人は、あまりいないのではないでしょうか』と、現場の先生でも牽引療法に疑問をもっているくらいなのです。
そのような事実があるにもかかわらず、昔からある治療法なので、あまり深く考えずにとりあえず牽引療法が行なわれている現状があります。
しかし一方で実際に牽引療法でよくなった人も確実に存在しているわけで、腰痛原因の7割が不明だといわれる中で腰痛に関する分野がまだ発展途上であることが伺えます。